数年前、飯坂薬局本店でお客様が遠慮深げに
「これ姪が書いた本なんだけど、薬局に置いて頂けませんか…」
と、ある本を差し出されました。
その本の名は「ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽」といいます。
著者は佐藤由美子さんという方で、10年間アメリカのホスピスで音楽療法士として働いてこられた方です。
ホスピスとは、死を目前にした人の身体的、精神的な苦しみを緩和する目的でつくられた、療養所や病院のことです。
アメリカでは非常に多くの方がホスピスケアを利用しており、驚くことにその数は亡くなる方の約半数、45%にも上るとの事です。
死の間際にある患者との関わりについて先駆的な業績で知られる、精神科医のエリザベス・キューブラー=ロス博士の本などにもありますが、人は亡くなる直前まで耳が聞こえているそうです。
2014年にはイギリスのサウサンプトン大学の研究チームが、心停止から蘇生した101人に対して調査を実施しました。
すると39%の患者が、心臓が再始動する前にも意識を自覚していたとの結果が出たのだそうです。
亡くなる直前まで、心臓が停止してからしばらくの間は意識があり、耳が聞こえているのだそうです。
このラストソングには、終末期医療において音楽療法という物が、残される人々にとってこんなにまで見事に意味があるのだという事を改めて教えてもらいました。
前述の通り、アメリカでは多くの方がホスピスを利用していますが、余命6ヶ月と宣告されると、病名に関係なくホスピスのケアを受ける事が可能で、その費用は政府が負担してくれるそうです。
皆保険制度ではないアメリカですが、末期の時を生きる人を支えるために1982年以降、法律が整備されました。
彼女はそこで音楽を用いて、亡くなる人や残される人々の心のケアをする仕事をしておられ、その中で印象的な10の出会いを書いておられます。
人生において数々の別れをどう乗り越えていくかが、その人の人生にとって非常に大きな意味があります。
卒業、転職、退職、引っ越し等色々な別れがありますが、その中でも一番つらい別れは人の死でしょう。
それらをいかに受け止め、乗り越えて成長につなげられるか。
あるいは、いつまでも喪失感を引きずり、心の痛みを抱えていくのかは、とても重要な事です。
「ラスト・ソング」は、たくさんの患者さんとの出会いを通し、著者の佐藤由美子さん自身も人間として、セラピストとして成長していく、優しさに満ちた本です。
人は最後まで人間として成長できるんだ。こんなにも穏やかに、尊厳に満ちた死を迎えられるんだと教えてもらえる本です。
自分にもいつか訪れる最期の時を、こんな風に迎えられたらどんなに良いだろうと思いました。
一読をお勧めいたします