薬の効き目には、体質の違いによって個人差があります。
もちろん西洋薬にもありますが、天然の原料を使っている漢方薬の方が、体質の違いによる効き目の差は大きいと言えます。
それだけに適切な体質の見極めが重要であり、その物差しとして古来より使われているのが「証」(しょう)という考え方です。
証とは漢方独自の理論に基づく考え方で、症状や体格、体力などから、患者さん一人ひとりの体質を見極めます。
体格の良い人は実証、そうではない人は虚証、等と分けて使う漢方薬を判断してゆきます。
舌を見せてもらう舌診も漢方の世界では良く行われますが、これも証を見極める目的で行われます。
そして、最近は腸内環境の良し悪しによっても漢方薬の効き目が変わってくることが分かってきました。
漢方薬の有効成分の多くが、配糖体という状態で存在します。
配糖体とは、糖と糖以外の成分が結合した物質で、生物界に広く存在しており、特に植物はほとんど全てが配糖体を含むと言われています。
配糖体は水に溶けやすく、油には溶けにくい性質を持っています。そのため、人間が配糖体を摂取しても脂質で出来た消化管の細胞膜を通りにくく、簡単には吸収されないという性質があります。
ところが大腸まで配糖体が到達すると、そこで吸収が行われるようになります。
では大腸で一体なにが配糖体に起こっているのでしょうか。それは大腸の腸内細菌(善玉菌)がカギになります。
腸内細菌は全部で100兆個とも300兆個とも言われ、膨大な数が大腸に住み着いています。その一部の善玉菌によって配糖体の糖が外され、大腸の細胞膜を通って吸収可能な形にしてくれているのです。
つまり、
① 腸で吸収されにくい、配糖体という状態の有効成分が、
② 大腸の善玉菌によって吸収されやすい状態に変換され、
④ はじめて吸収されて効果を発揮するようになる。 という事です。
良く使われている下剤の有効成分で、センナという植物から抽出される、センノシドという成分があります。
元昭和薬科大学教授の田代眞一先生によると、センノシドを直接注射しても下剤効果が見られないそうです。
また、あらかじめ抗生物質で腸内細菌を減らした動物や、全く腸内細菌のいない状態にした無菌動物に口から投与しても効果が見られないそうです。
腸内善玉菌が、吸収されにくい有効成分を、吸収の良い状態に変換させる、というプロセスが重要なようです。
上述させて頂いた様に、漢方を選ぶ物差しに体格や性格などから考える証という物差しがあります。ですが、証が合っていてもイマイチ効き目が発揮されない事があります。
漢方薬(おそらく西洋薬も)をしっかり効かせるためには良好な腸内環境が必要なのです。
便秘や下痢をしていなくとも、腸内環境が悪い場合があります。
気になる方はぜひご相談下さい。